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密室の恋 6

 私の浮かれ気分に引き換え、室長の反応は相変わらずだ。
 いや、室長だけじゃない。秘書室にいくと秘書のみんなが遠巻きに私を見る。心配そうに。
 ――私全然平気ですけど?
 そう言おうとしてはまた口篭もる私。
 どうやら『大変』だって思い込んでるみたいだからわざわざ明るく払拭するのも気がひける。今の所はまだ『秘密の空間』って感じだろうか。
 実際の所、
「おはようございます!」
 声も日ごとに朗らかになっていってる筈。
 この部屋マジ住みたいくらい素敵……。
 大きなガラス窓の向うには新宿副都心が丸見えで。ここ倒産してもホテルとして十分復活できそうだ。
「おはよう」
 その前に座ってる男の人は(ちょっと年いってるけど)超カッコよくって。
 そして乙女(?)の料理心をくすぐるお洒落なシステムキッチン……。洗練されたデザインで、最初に見たときから私は気になっていた。
 これって、どこかのお店で見たのと似てるな。
 ――TCにあったキッチンセットじゃないの? コレ。
 でもあれって200万くらいするよね?
『お店のシンクがこうだったらいいね』なんてかつてバイトの子同士で言ってた覚えがある。
 ……すごい、たかだか会社の給湯設備にあんなインテリアのお店のシステムキッチンいれるかな?
 つくづくリッチな会社だ。
 カウンタートップは木製で下は全て白い引き出し式の収納になってる。
 ちょっとしたマンションのよりもリッチな気分。
 しかも私一人で好きに使えるしー。
 マジこんな楽な職場ないって。
 さー、昨日からの行事。カメラマン気取って料理の写真を携帯に納める。
 今日の一品は手まり寿司のセット。
 ランチに4、5万かけるという話をしたからなのか、少し手の込んだものしようかとこれにした。
 っていっても自前の土鍋でご飯炊いてすし飯にして具を合せるだけだけどね。楽チンなのに見栄えがする奥の手メニューだろうか。
「あのぅ、すみません。お昼お寿司にしたいんですけど、お飲み物は日本茶でもいいですか? あそこにあったお茶の葉湿気てたんで家から新しいの持ってきたんですけど」
 朝のうちに聞いておいた。この人コーヒー党だって言うから確認しておかないといけない。
「ああ、どうぞ。お任せします」
 あっさりイエスのお返事が出た。



 お昼。小さな鞠の形をした茶巾寿司その他を彼は黙って口に運んでいた。
 食後もコーヒーを催促することもなくお茶をすすって。
 うん、和食もいいねえ。ちゃーの匂いも癒される。
 ――なんて思ってると、
「……君は日本茶をいれるのも上手なんだな」
 不意に誉められる。
「……え。と、とんでもないです」
 手を振って否定する。
 ――単に飲み慣れてるだけだ。ウチ家族揃ってお茶飲みだから。小さい頃から『お茶っ葉に熱湯かけちゃイカン!』と言われ続けてるからもう染み込んでいるのだ。っていっても大したことしてないけどね。
「美味いよ。本当に」
「はは、いや、私の田舎、お茶所なんですよね。だからかな?」
 私は照れくさくってそんな風に言った。まあ真実ではある。
「……そうか。君は出身はどこだったかな?」
「え」
 ちょっとビクる。それは……あんまり言いたくなかったりして。
「……ま、松江です」
 それでも言わないわけにいかなくて、小さな声でそう言うと、
「ああ」
 と会長さんは何回か頷いた。
「お茶所か。確かに。―――いい所だね」
 ――え?
 ちょっと驚く私。この手の会話をしてこんな反応返ってきたのははじめてだったからだ。
 ―――今までのケースだと、
『田舎どこ?』
 と聞かれて、
『松江』
 って言うと、まず殆どが『ふうん』で終わる。
 たまーに、
『松江ってどこ?』
 などと突っ込まれるが、
『島根県』
 そう答えると、
『島根ってどこだっけ?』
『……山陰よ』
『山陰って??』
『…………』
 そんな感じなのよ。ちなみに『山陰』の箇所を『中国地方』と差し替えても反応はさほど変わらない。
 そうそう、何を隠そう松江市は日本一存在感のない県庁所在地であるらしい。
 東京に出てきてそのことに気付いた私は自分から故郷の話をすることはめったになくなったのだ。
 ―――それが。
「いい所だね。仕事以外では昔祖父に連れられて行ったことがあったな」
 ……なんて言われたらそりゃ驚きますって。 
 ――ま、大企業の会長なんだから、『松江ってどこ?』じゃ困るんだけどさ。
 チョット嬉しいじゃん。素直に。
「足立美術館があるだろ? 何度か行った覚えがある」
 ああ、あの田んぼの真中のどでかい美術館。山陰じゃ割と有名な美術館だ。……地元の若者はあんまし行かないけどね。
「あと皆生温泉かな。蟹が美味いね」
「は、はあ……」
 島根県じゃないけど近所だ。こんな所で地元の地名聞くとはちょっと照れくさい。
「君はいい所で育ったんだな」
 えーー? あまりにも意外なお言葉。やっぱこの人の感性ちょっと変?
 だってねえ、お茶と和菓子が美味しい以外あんまり自慢できる所ないんだもん。和菓子食べつけてたせいか私は東京来るまでダイエットとは無縁だった。小さい頃からおやつといえば決まってまんじゅう。ちび○こか私は。
「どうでしょうか。お茶はまあ好きですけど」
 母親が定期的に送ってくるんだ、地元の銘柄茶葉。それ飲みつけてるから他所のはよくわかんない。
「でも会長はコーヒーの方がよろしいでしょう?」
 私は話を切ろうとした。
「いや。別にそれほどでもない」
「え?」
 ――コーヒー党じゃないの? 室長が言ってたけど、そうだって。
「レーベルを指定した覚えもないしね」
「え?」
 ――それじゃブルマンとかエスプレッソマシンとかあのものたちは何?
「あのー。コーヒーがお好きで私を呼ばれたんじゃないんですか?」
 私は正直に尋ねた。
 会長はふふ、と軽く笑う。
「……話せば長くなるかな。でも話そうか」
 そう言って、姿勢を少し正して。
「確かにタバコを止めてから飲む回数は増えたが、別にこだわってるわけじゃない。給湯室にあるものは全て秘書室の白本君が揃えたんだよ」
 え、室長が?
「……秘書の入れたコーヒーをまずいと言った覚えもない。一口だけ口をつけてそのまま飲まずにいて……それで『入れなおしてくれ』と言ったことは何度もあるがね」
「え、そうなんですか……」
 それが皆が口篭もる緊迫のシーン?
「―――口をつけて離してそのまま忘れてしまうようなそんな入れ方だったんだろうな。熱すぎたり、ぬるすぎたり、薄すぎたり……。味は微妙に変わるから。別にまずくて飲まなかったわけじゃない。ただ忘れてたんだよ。仕事に集中してるとついそうなるんだ」
「はあ……」
 まあカフェでもそうだものな。どんなにちゃんと入れても残す人は絶対いる。
「――だが、コーヒーはそんなところだが、日本茶にいたってはまるでなってなくてね。まずいとは面と向かって言えないが飲めないんだよ。あれほど秘書が揃っていて珍しいものだが誰一人。唯一飲めたのは、たまたま清掃に入っていたパートの婦人の入れたものだったな。私はいつも私がいる前でクリーニングさせるんだが、たまたま日本茶を入れようとしていた私に、『よかったら煎れましょうか』と話し掛けてきた。やり方にしても別に普通だと思ったが、そのときが唯一飲めたな」
 えーー。会長自らお茶を入れようとしてたの? やっぱ『うるさい』んじゃん。
「とやかく言うつもりはないが、マナー以前に『基本』だと思わんか? 他の重役にも出してるんだからそう悪くはないんだろうが、どの者もなじんでないように思う。私にもできることが何故出来ないのか不思議だよ。白本くんがあれこれ気を使ってやってるんだが、それも鬱陶しくなってある日言ったんだ」

『茶ひとつ満足に入れられない秘書はこの部屋に入れるな! 気が散る』

 ……すご。それってやばくないすか、会長。

「……ふ、それからしばらくして君のことをどこかで聞きつけてきたんだろう。それで君が私の前に現れた」
 そうなんだ。
 たまたまこの人の舌に合っていたのか、私。やっぱ超ラッキーだったんだ。秘書室の人も大変だな。
「そうだったんですか。……それじゃご自宅では奥様がされてるんですか?」
 何も考えず私は頭に浮かんだままを尋ねた。普通はそうだろうから。
 私の問いに会長の表情が少しだけ揺らぐ。ふっと息だけで笑う。
 そして、
「……結婚しているように見えるか?」 
「え」
 そんな言い方って。
「は、はあ。そうかなと思います」
 年齢からして、地位からしてそれが普通なんじゃないかと。
「……してないよ。しかけたことはあったけどね」

 ―――え?

 胸が鳴った。

「……あ、す、すみません、失礼なことを言って」
「いや。……君は私のことを何も聞かされてないんだな」
「は、はあ……」
 バツが悪くなってうつむく私。
「ふ、どうせとっつきにくいだの言ってるんだろう。事実そうだから仕方あるまいが」
「い、いえ。そんなことは……」
「仕事に入ると何をされても気が向かなくてね。どうにもきつく当たってしまうんだ」
 ……。何を言えばいいの。私。
「こんな性分だから……。私は一生結婚なんてしないだろうな」
 って……。


 ―はぁ―――……。

 ランチと間食の片づけをして私はしばらく予備室でぼーっと宙を眺めていた。
 何でそうしてたのかわからないけど、何だか気が抜けて。

 ――独身なんだ。
 
 あ、もしや。
 あの人、女嫌いなのでは?
 そんなことばが浮かんだ。
 ピリピリした雰囲気はそういうところからきてるんじゃないかな。
 それで秘書にきつく当たるのかも。
 ――それならほぼ納得できる。今までの素朴な疑問。

 ―ふ――ん……。そっか……。

 ぼーっとして、昨日あんなにのめりこんでたブログ更新する気にもならない。
 ようやく見ようという気になったのは終業時刻が近づいて、
『帰っていいよ』
 そう言われた後だった。
 それでも別に見たいって気はなくって、何となく、そうした。まだボ―ッとしてて立ち上げてアクセスして。
 はっとした。
「……ん? えっ」
 コメントが1、とある。
 ――誰か来たの? こんなに早く。
 ……想定してなかっただけに正直驚く。


『はじめまして。こんにちは。みなみんと申します。おひるごはんで検索してきました。kofiさんはカフェで働かれてたんですね〜。今は専属でご奉仕中って。。つまりご結婚されてるってことですかぁ? vip様と……』


「はい?」


 ドキン。
 なんかまた胸が鳴った。

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密室の恋 7

 ―――結婚!?

 ……何でそうなっちゃうわけ?
 わけわからずしばらくPCの前で固まって。
 しげしげと、自分の書いた紹介文を見つめる。
 ……。もしかして。
 『専属でお料理作ってます』=『結婚してる』って意味に受け取られるの?
 え――……。驚くよソレ。
 さらに固まること数分。
 ―――これはまず誤解を解かねば。
 そう思い立ち、レスをしようとキーボードを触る。
 けど、
 ―――あ、ダメダメ、携帯からしなくちゃ。
 と気付き、あたふた携帯を出していじる。
 ていうか、よく考えたらPC起動させなくてもよかったんじゃないの。こんな帰り際に。
 気持ちだけ焦って文章がまとまらない。
「市川くん。まだいるのか?」
 ドキッ。
 ――いけないっ。
 咄嗟に画面を閉じる私。携帯をスカートのポケットに突っ込んで。
「市川くん」
 ドアが開いて、会長が中に入ってきた。
「は、はいっ」
「まだいたのか。私ももう出るから帰り支度をしなさい」
「はい。すみません」
 会長はPCなんて見向きもせずにまたドアの向うに消えた。
 結婚なんて書かれたもんだから余計にドギマギしちゃったじゃない。私の存在なんて無視されてるのに……。いつも仕事に集中してて私がドア開けて帰ったかどうかも気付いてない。
 私は急いで片して会長と一緒に部屋を出た。歩いてると、エレベーターから出てきた秘書の人がこっちに気付いた。
「会長。お車の用意が出来てます」
 室長じゃないけどどことなくおそるおそるっていう感じの喋り方だった。
「ん」
「お出かけですか、会長」
 何気に私は尋ねる。
「ああ」
「これから?」
「会食だ。……殆ど毎晩な」
 と彼は苦笑して、私は秘書室のある下の階で一旦エレベーターを降りた。


 毎晩会食って……。
 大変なんだな――。
 知らなかった。いつも先に帰されてたから。
 またぼ―っとなりかける私。

 ―――あ、それよりもレスしなきゃ!

 私は新宿駅でまた携帯を取り出した。
 携帯カキコってこういうとき便利かもしれない。通勤時間がつぶせる。立って電車に揺られながら私は文章を考えた。

『こんにちは。みなみんさん。コメントありがとうございます。あのなんか誤解を招いちゃったみたいなので訂正しますね。私はとあるvip様のオフィスでお料理をお出しするオシゴトをしております。だから新婚さんじゃないですよ――。ごめんなさい。vip様はちょっとおじさんですが、超リッチで超カッコいいです。密かに眺めては楽しんでおります。ラッキ―――』

 頭をひねった割にとっても稚拙な文章だが。ハズ……。でもまあいいや、と送信した。丁度電車を降りる頃だったし。
 さぁて、次のメニューは何にしよっかな〜。そんな想像しながらまっすぐ家路を急ぐ。
 家に着いて、シャワー浴びてご飯済ませて一段落して何気なく携帯でブログにつなぐと、またコメントが入っていた。
 みなみんさんからだ。

『こんばんは〜。みなみんです。ごめんなさい、勝手に勘違いして。えーっと実は私、最近結婚が決まって、カレシの部屋に住んでるんですが、カレシ自営なのでおひるに時々帰ってくるんです。で最近、お前の作った昼飯食べたい、って言い出して。。。でも私料理がすっごくダメなんです。今日もカレシお昼に帰ってきたんですが出来合いの惣菜お皿に出してごまかしちゃいました。ダメですよね。。反省。。。してるんだけど私料理の本とか読むのも苦手で。まずいの作って嫌われたらどうしようって。最近すごいブルーです。kofiさんの生春巻き美味しそう。。。vip様は今日もお食べになりましたか? 素敵な方なんですね。うっとり・・』

 って長々と。
 しかもこんなに早く書き込みするなんて。
 この人カレシの部屋でネットつなぎっぱなしなのかな。PCにはりついてるの? ある意味羨ましい状況だ。
 ―――これ書いてるってことは今カレシは部屋にいないんだろうな。
 色んな想像してしまう私。
 そしてまたお返しの文章を考える。

『えっと、食べてもらえました。お昼は手毬寿司、デザートはスフレフロマージュでした。超簡単ですよ。画像は後ほどアップします』

 送ると、30分もしないうちに書き込みがされている。

『そうですか。いいなー。うらやましいです。あ、すみません、なんかチャットみたいになっちゃいましたね。今私部屋に1人でいるんです。ていうかカレシ夜は殆ど外食というか接待なんで、この時間一緒にいることはまずないんです。朝も食べずに出て行くし。だからお昼の時間を大切にしたいんですが私料理超下手でしょ? このところすっっっごい悩んでます。料理のブログかたっぱしからあさってたんですが、みなさんお上手でちょっと書き込みしにくいんですよね。でもなんかkofiさんって雰囲気的に話せそうな気がして。出来たてブログだし。すみません、いきなり』

 ……そんな風に言われると。
 またまた返信する私。
 料金定額じゃないのに……。
 ――ま、いっか。
 いいじゃん、来月から給料30万+αだよ? そんなこせこせするなって。

『私も今お部屋からです。携帯なんでちょっと文章変かも。。カレシさんととってもしあわせそうで羨ましいな。どんな人ですか?』

 マジチャットみたいな使い方。
 数分おいて更新すると、すぐにみなみんさんの書き込みが。

『カレシは汐留族で、ちょっと長州小力に似ています』


 ――長州……!?
 そこで私は思わず吹いた。
 って、お笑いタレントだよね? ちょっとぽちゃっとした。
 汐留族の長州小力って。ププッ。


『――これ言うとみんな笑いますが。でもカレシってばすっっごくかわいーんです♪ 合コンで知り合いました。初めてのデートでもんじゃ(カレシの大好物です!)を食べに連れて行ってもらったんですが、へらすくっておいしそーに食べてるとこがチョ〜〜かわいくって・・。私の方がホレちゃいました♪』


 そうなんだー。長州コリキ似のカレシ……。
 何かわかるような気もする。母性本能くすぐるタイプなのかもしれないな。
 ……かわいーな。みなみんさんって。


『カレシは一応会社の社長さんです。ITじゃないけど。ヒルズにも知り合いがいっぱいいるみたいです。最初ははっきり言ってそんなセレブっぽい所にひかれたんだけど今はもうどっぷりラブ♪尽くしたいって感じです。本当は私の手料理食べてもらいたい。。。それに毎晩接待ってなんか心配じゃないですか?病気とか。カレシもう30過ぎてるんで(オジサン)。お昼くらいは手料理がいいですよねー。作れないけど。ヒロくん(カレシのHNです)にいつか私の作った料理食べさせて美味しいって言われたいです。Kofiさんのvip様はどちらにお勤めですか? 同じ汐留だったりして。ちがうかー』


 ―――どこって。

『ウチは新宿です』

 なんて書くといずればれちゃいそう……。
 というか、その言い方ってちょっとマダムの井戸端会議っぽくない?

「プッ」

 ヤダも――。胸がこそばゆい。だから結婚なんてしてないってのに。


『ええと、場所はちょっと秘密です。汐留じゃないかも――。でもSがつくのは一緒かな?』

 会長のこと……。書いちゃやばいよね。
 ――HNつけて登場させるくらいならいっかな。
 ぼんやり名前を考えてみる。

 ―――えーと、なるあき……。あきくん……なるくん……。
 や、かわいー。なるくん!?
 なんか子供みたいジャン?
 ってそのまんまかよ。こんなのダメだ。


『……それとvip様じゃなんかマジオヤジっぽいのでnars(ナール)さんてことにしときます。narsさんもそういえば毎晩接待みたいなことをおっしゃってました。お体のこと気になりますねー、お互い。ヘルシーな楽チンメニュー思いついたらアップしてみますね。あ、その前に食べてもらえなきゃダメだけど。頑張りまーす』


 ……ピッ。
 気付いたらかなりの時間接続してて。あんましやったことなかったから要領悪くって余計に。
 しょっぱなからこれじゃ今月分の請求コワイなー。
 フゥ――……。
 だけど。
 確かにそうなんだけど。
 何だか胸があったかくなって……。
 ――みなみんさんとヒロくんって。
 ヒロくんは想像できるけど、みなみんさんはどんな子なんだろう。
 カレシが家に住まわせてるくらいだからきっと超カワイーんだろうな。
 料理できないくらい別にどうってことないじゃん?
 いいナー。
 私の方が羨ましいよ。大事にされてて……。
 私なんて会長の怒り買って首切られたら終わりだもんね。
 何たって、
 ―――茶ひとつ満足に入れられない秘書は部屋に入れるな!
 ってお人だから。
 もー、会長ってばおじいさんじゃないんだからさ。お茶くらいくいっと飲んじゃえば?
 偏屈爺さん……。
 でもなんか憎めないっていうか……。
 ……私も……母性本能……くすぐられてるのかもしれない……。

 私は最後のカキコした後、携帯持ったまま眠ってしまった。

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密室の恋 8

 目覚めは最高だ。
 隣りの男のお陰で早寝早起きの習慣がついちゃって。
 けど今朝は先週の『みなみんさん』のかきこみがちょっと胸に引っかかっていた。
『毎晩接待ってなんか心配じゃないですか?病気とか』
 そうだよね。
 みなみんさんのカレシは30過ぎててウチの会長は33歳……。
 そろそろ成人病が気になる年代だろうか。
 不安だ、突然倒れられたりしたら。
 だって!
 もしも会長が入院でもしたら私はその間プーになってしまうじゃん?
 そんなの困る!
 あの人に健康でいてもらわなければ私の仕事は成り立たない。
 ――何が何でも会長には長生きしてもらわないと!
 というわけで、私は朝早くから携帯でネットにつなぐ。
『成人病 メニュー 血液サラサラ』
 などのキーワード検索かけてメニューを組みなおして。
 早朝から開いてるお店で材料仕入れて出社。
 なんかこの行為自体おヨメ気分だったりして。会社に料理作りに来てるOLなんてひょっとして私だけ……?
 ―――。ま、いっか。お茶汲みの上級職だと思えば。
 さあヘルシー大作戦スタート!
 密かに意気込む私は朝一番ある錠剤を会長にお出しした。
「あの、よろしかったらこれをお飲みください。胃のもたれなどに少しでも効きますよ」
 ……実は100円ショップのシロモノなのだが。家にあるのをとりあえず持ってきた。100円ショップの袋のままじゃアレなんでかわいい小瓶(これも100円……)に入れ替えて飲んでたんだけど、効果ははっきりいってよくわかんない。でもおじさんには少しは効くかもしれない。そんな思いつきで。何のサプリかラベル貼るの忘れたのでよくわからないけど、『お酒をよく飲まれる方へ』みたいなこと書いてあったはずだ。
「で、こちらは目の疲れにいいです」
 と、ブルーベリーの錠剤まで(――こちらは小瓶にブルーベリーのシール貼っていたので間違いなくブルーベリーだ)。毎日PC睨んでてきっと目もお疲れ気味だろうから。
 会長はお水と小皿に載った錠剤を見つめたまま黙っていた。
「……あ、すみません。お嫌いですか、サプリメント」
 ―――はっ、嫌なのかも。すぐに謝る私。
「……いや。置いといてくれ。あとで飲む」
「はい」
 ホッ。ちょっと緊張した。いきなり過ぎたかな。オヤジ扱いするなって?
「……悪いが濃い目の入れてもらえる? どうも昨夜の食事が合わなかったようだ」
 と、コーヒーのご注文が。
 案の定……。というか私の不安は的中したみたいだ。胃のあたりを手で押さえる会長。
 やっぱ『接待』って不安要素大だ。無理にでも飲まなきゃいけないなんて。しかも連日でしょ? まるで早死にしろって言ってるようなものじゃん……。
 ――だから! 死んでもらっちゃ困るって!!
「……あの。それでしたらエスプレッソはいかがでしょうか」
 私はそんな進言をしてみる。
「ん?」
「あ、その、エスプレッソの方が胃には優しいですよ。抽出時間が短いのでカフェインも案外少ないんです」
 別に銘柄にこだわってないって言ってたから。コーヒー日に何杯も飲んでたら胃に悪いのは確かだ。
「……そうか。ならそうしてくれ」
「はい」
 ここに来てはじめてエスプレッソマシンの電源を入れる。スタバのヤツだ。エスプレッソ以外にも使えて便利なマシン。これも室長が揃えたのかな。きっと気を使ってあちこち探してきて……。そんなあれこれ思ってるうちにいい匂いが辺りを覆う。
 圧縮音とともにデミタスに注いで角砂糖をポトン……。会長にお渡しした。さっき置いていったコップとお皿が空になってるのでそっちを下げる。
 少しして戻ると、
「もう一杯くれ」
 と言われる。
「あ、お口に合いましたか」
「ん。濃さが丁度いい」
「それじゃおつぎします」
 お部屋に満ちる濃厚な豆の香り。ああ〜、コーヒー好きじゃなくてもいい匂いと思ってしまうよね。カフェインの誘惑。それは紛れもなく麻薬(アルカノイド)でもある。
「市川くん」
「はい」
「明日から朝はこれにしてくれ。気分がすっきりする」
「あ……。はい」
 よっしゃあ!
 妙に嬉しくなって私は厨房に引っ込んで小さなガッツポーズをした。
 くす。
 何か憎めないな。
 あの人……。
 何だかんだ言って何でも飲むし食べてくれるじゃん?
 食後のお皿やカップも綺麗で。よほどいい躾されたお坊ちゃんなのだと想像つく。
 ちょっと一瞬コワイけどこの調子でいけば私……。

 ―――この部屋に半永久就職できるかもしれない? ククク……。



 お昼は早速健康メニュー。
 生ブラッドオレンジのジュースと、牛蒡、寒天、にんじん、パプリカその他を詰めたピタパンを出す。
 ブラッドオレンジは母親が以前『あるある大辞典』か『みのもんた』の番組のどちらかで紹介されたとか言って送ってきたことがある。東京でも売ってるっつーに。もー典型的なおばさんなんだから。『みのもんた』と『あるある』と『細木和子』の信者と化してるのだ(アチャー。絶対田舎には帰りたくないっ)。
 まあそれはおいといて、純粋に健康にはいいらしいよ? 今朝買ってきたの。ジューサーがないので手で絞って漉した。
「は―。たまにはこういう飲み物もいいな」
 会長はジュースを飲んだあと、椅子の背もたれにもたれ軽く目頭を押さえた。目が疲れてるんだ……。一日中PC見てたらそりゃよくないだろうな。
 ささっと厨房に戻ってまた奥の手を出す私。
「あの、よかったらこれ使ってください。目元がすっきりしますよ」
「え?」
 すぐ目の前に差し出されたものだから会長は自然とそれを受け取った。
「アイマスクなんですけど。あっためても冷やしても使えるんです。今レンジで温めましたから、15分くらいはあったかいですよ」
「ん……。そうか」
 あまり気乗りしない風に両手でマスクをぽんぽん渡す。中にゲル状のものが入っていて温めたり冷やしたりして使えるアイマスク。私の愛用品でもある。もちろんここに出したのは新品だけども。
「……。君は気がきくんだな」
 そう言ったかと思うと、会長はおもむろにメガネを外して。
 私はその想定外の光景に目を奪われた。

 ―――すご、きれいな顔……。

 想定外ってことはないんだけど。アイマスクするには眼鏡外さなきゃならないわけで。
 だがその当たり前の行為によって現れたフェイスに私はときめいてしまう。

 ―――こんな顔してこの人女嫌いなの? もったいないじゃん。

 つい余計なおせっかいまでやいてしまうような整い方。

 ―――眼鏡外して歩けばいいのに。そうしたら秘書室の人もきゃーきゃー騒いだりして?

 中には眼鏡をかけたほうが好きという通な方もいるだろうけども。
 会長は何も言わずぽんと目の上にアイマスクを載せて椅子に寝そべった。高級なエグゼクティブシートは上手い具合にリクライニングして、私の胸のすぐ下に会長の顔が。
「ん――。確かに気持ちいいな」
 そう呟く会長のすっと通る鼻筋がアイマスクしてるせいで更に強調されて。

 ―――超カッコイイ―……。

 思わず呟きたくなるというもの。彼の視界が遮られてるのをいいことにまじまじと見つめる私。ゆるやかに時は流れる。
「……そんなに……長時間PCの前にいらっしゃったら疲れてしまいますよ……。少し休みながらされた方が……。お酒も少し控えられた方が……」
 胸の奥が波打つのを感じながら囁くように。そう言うと会長は少しだけ笑った。
「私の決裁印がないと動かないものが多いんだよ。特に役所関連はな」
 しばらくしてアイマスクを取って、眼鏡をかけて改めて会長はそう言った。
「でも……」
 ――普通会長って社長とかより暇な感じするけど? 『特命係長只野仁』に出てくる会長なんて正にそうじゃん? あ、例えがよくないか。
「―――社会の殆どがコネで動いている。私の家には曽祖父の代から続く人脈があってね。つきあいってものはどうしてもビジネスと切り離せないんだよ。私自身、各省庁に数十名個人的な知り合いがいるしな」
「は、はあ」
「そのしくみがあと何年持つか知らんが……。有効な限り続けざるをえないだろう。我が社は旧財閥時代からのグループ会社が200を超えるからね。その横のつながりだけでも相当なもんだ。君はウチの株価が今日現在いくらかわかるか?」
「え、い、いえ。知りません」
「フ、1060。少し値を下げたな。ウチは言わずと知れた古株企業だが私の父の代から外資の巨大グループと手を組んできた。予期せぬ買収や過当競争を回避するための業務提携や合併事業……それを通じてまた新たなコネを作って。しかしそれでも万全とはいえない。私はしばらくアメリカにいたんだが、その当時から知る同世代の若い事業主とも懇意にしている。これまでのように古い付き合いだけではもうやっていけない。のんびり休んでる暇なんてないよ。この椅子に座ってる限りはね」
「そ、そうですか。でも私にはちょっと……。難しい、かな?」
 よろめきそうになる私。急に真面目な顔して。ドキドキするじゃん……。
「知っておきなさい。基礎の基礎だ」
「は、はあ……」



 予備室の机についてPCを開く。ブログを覗くとその後みなみんさんから短いコメントが入っていた。

『じゃアップを楽しみにしてますねー。それとごめんなさい、はじめてなのに長文ばっかりで。。また来ますね』

 かわいー人だ。カレシに『美味しい』って言ってもらいたいってその気持ちがかわいいよね。
 ――それに比べて私。今まで付き合った人でそんな風に思った人っていた?
 料理を作ってあげることは確かにあったけど、
『どう?』
『うん、美味いよ』
 その程度で終わっていたような。
 みなみんさんみたいに浮かれることはあんまりなかったかもしれない、この26年の恋愛経験で。
 ラブ♪って。ありえない、ありえない――。
 
 ラブ……。
 


『知っておきなさい。基礎の基礎だ』

「…………」
 さっき言われたこと思い出してぽっと胸があったかくなる。
 あのエラソーなものの言い方も妙に私のつぼにはまるの……。
 経済の基礎なんかより私は、会長の任期の方が知りたいです。
 何で社長じゃなくて会長なの? ずっと会長のままなの?
 聞きたいけど聞けない疑問が頭を巡って。
 仕方なく会長やってるってニュアンスに取れた。
 どうしてなのか私にはよくわかんないけど。
 あの人にはずっと元気でいてほしい。
 こんな楽な仕事ってないもの……。

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密室の恋 9

 ヘルシーメニュー。
 その言葉から連想するのはやっぱ和食、だろうか。
 甘い和惣菜はダメ、と言われたけど寿司系はオッケーみたいなので、朝イチのエスプレッソ出した後張り切って茶そばの巻き寿司を巻く。
 これって初めて大阪に遊びに行った時駅で買った思い出の一品でもある。こういう食べ物ってあるんだ、と素直に感動したのを覚えている。お米が蕎麦に替わっただけの発想の転換なのだが。
 それをお昼にまたまた自前のお茶とともに並べて。効くかどうかわかんないサプリも添えて。
 少しして会長に呼ばれた。
「ご馳走様。――そういえば言ってなかったが私は蕎麦が苦手で食べないんだった」
「え?」
 ひやっとした。問題発言。早く言ってよ! しかしお皿は綺麗に片付いている。
「……食べた後で思い出したんだ。美味かったよ」
「は、はあ……」
 会長は首をかしげた。
「あ、なら別に言う必要なかったか。何を言ってるのかな、私は。気にしないでくれ」
「は、はい」
 ? 意味不明。どっかおじさんちっくなんだから。ぷぷっと一人受けする私。
「それと、市川くん」
「はい」
「給料について君はどうもはっきりしないからとりあえず特別賞与扱いにして振り込ませておいたよ。明細を渡しておこう」
「はい?」
 私は手渡されたものを見てびっくりした。
「な、なんですか、これ」
「賞与の明細だ。経理に調べさせた金額なんだがね、それが業種の最低のラインらしい」
 最低って。20万以上ありますけど?
「こ、これ、賞与って」
「材料費プラスαだな」
 固まってしまう私と対照的に会長はあっさりと言い放つ。
「言っておくがとりあえず臨時の賞与であって基本給はまた別だよ。偶然秘書の給与とほぼ同じだそうだからまあ妥当な所だろう。また不都合でもあれば言いなさい」
「は、はあ」
 有無も言わさんって雰囲気に尻込みし、予備室に引っ込んで呆然と給与明細を見つめる私。  
 えーー。ってまじ? これに給料が加算されるの? 30万プラスαって私せいぜい5000円……よくて数万そこらだと思ってた。そんなもんじゃん? 住宅手当とか教育手当てとかと一緒じゃないの? それが20万って……。もしかして来月の給料50万あるってこと? 秘書並み? ウソ―――……。ウチのお父さんより多いかもしれない。
 貧乏性の私はしまいには手が震え、かなりの時間そこに篭っていたらしい。
「市川くん」
 ―――は。
「市川くん。ちょっと来なさい」
「は、はい!」
 何度も呼ばれてはっと気付き、あせって部屋を出る私。――出て、更に慌てた。

 ――や、やば!

 お初の『来客』だったのだ!
「や、すみません、私、お茶もお出ししないで」
 それに確かこのお方は……。わわわ。
「いや。いいよ、お茶ならもう飲んだ。君もこっちへ来て頂きなさい」
「え?」
 何のことかわからず二人を見つめる私。会長の机の上には小さな紙の包みがのっかっていた。
「姫島副社長だ。わかるかな?」
 うわー、そう。副社長だ。副社長が来られてるってのに、私ったら!
 よく見ると副社長は会長のすぐそばでみすぼらしい補助椅子みたいなのにちょこんと腰掛けていた。
 ――ちょっと会長、副社長がいらしてるのに補助椅子なんかに座らせちゃっていいの!?
 なんか情けない図だ。私に気前よく給料振り込むくらいならソファセット買えばいいのに、会長。
「あ、あの、椅子をお持ちしましょうか」
 せめて私は遠く離れた秘書席の椅子を持ってこようとする。そもそも会長が部屋にいるときはここに座って来客の応対とかしないといけないのだろうに……。いくら特殊な業務だからって。
「いやいや」
 笑いながら副社長は首を横に振った。気のよさそうなおじさん。50代半ばというところか。
「いいんですよ、いらない、いらない、すぐに退散しますから」
「ふ。腰掛けるものはあったんだが取り払ってしまったんだよ」
 と、会長。は。さようで。
「そうそう、今では私の部屋にそれが来てましてね。だから副社長室には応接セットがふたつあるんですよ」
 笑い話かい、それ。会長の人嫌いも困ったものだ。
 人嫌い……。だけど何だか今は様子が違う。空気がぴんと張り詰めていないような。副社長の優しい笑顔がそう物語っている。
「副社長が君にこれを持ってきてくれたんだよ」
 と、私の目の前にすっと寄せられた包み。
 え? これって……。

 ―――ガトーショコラフォンデュ……。

 うっすらと中身が透けて。手をかざすと熱い。そのせいでパラフィン紙の包み紙がふわっと膨らんでいる。きゅっとピンクとブラウンのリボンで結ばれて、可愛いラッピングだ。
「なじみの店に言って作ってもらったんですよ。お皿もフォークも入ってますからどうぞそのまま召し上がって。―――今年のバレンタインに品物と一緒にこれを配ったら秘書の方に喜ばれてね。市川さんはその頃いなかったでしょう? だからどうかなと思いまして。差し入れに来ました」
「あ、は、はい、え、そんな、すみません、じゃ、私だけ?―――え、バレンタインに??」
 配ったって。普通女の社員が男の上司とかにあげるんじゃないの? いわゆる義理チョコってヤツだ。
 きょとんとした顔をしただろう私に、会長と副社長はふふっと軽い笑みを浮かべた。
「……いい年をした男が真冬の時分にチョコレートの類をもらって喜ぶと思うか?」
 ぐさりと胸に突き刺さる会長のお言葉。
 ……でも真夏にわたすとドロドロに溶けちゃうじゃん? 無声で意味のない反論をする私。確かにバレンタインに男にチョコあげるより貰った方が嬉しいなって思ったことはあるけれども。チョコ好きなのは圧倒的に女の方だからさ。しかしそう冷たく斬り捨てるのもどうかと。
 微笑みながら副社長がちゃんと説明を施してくれた。
「毎年毎年女性も気を使って大変でしょう。正直私らも年だしねえ。ウチの会社は基本的に義理チョコはなしってことにしてるんですよ。まあ判断は各職場に任せてはいるんですけどね。全然もらわないって訳じゃないんですよ。得意先の秘書の方から結構な数頂いてますし、そちらの方はお断りするわけにいかないんで、せめて内部では義理は辞めておこうとそうしてるんです。逆にいつもお世話になっている秘書室の方々に希望を聞いて毎年ささやかな贈り物をしてるんですよ。菓子を添えてね。ふふふ、スポンサーは会長ですが」
「……副社長の目利きのお陰で今の所秘書の連中の不満はないようだが」
 会長は皮肉っぽく笑った。ささやかなって……。どうせブランド物か何かでは? 秘書室の人全員に? やっぱこの会社ってばすごいな。
「まあ、食べなさい。冷めないうちに」
「は、はい。すみません、頂きます」
 食べろと言われて、何故かコーヒーまで入れてあって、私は遠慮なく会長の広い机の端っこで包みを開けた。補助椅子に腰掛けて。ちなみに補助椅子と言ってもフラワーベースか何かを飾るスツールのようなシロモノだ。
 途端に広がる甘いカカオの香り。ああ、幸せ〜。フォークを入れて更に幸せ……。今度は目で味わう。とろーりと中からチョコレートが溶け出して下に敷いたアングレーズソースと混ざる。
 オイシソ―――!!
 これ嫌いな女の子っていないんじゃないかな、マジで。
「いただきまーーす」
 勢いよくほおばった。
 おいしいっっっ――!!
 チョコレート生地の中からチョコレートが溶け出し、更にバニラ風味のソースと粉砂糖がこれでもかって甘味攻撃をかける。
 パフェにも勝るスイーツオンスイーツだ。しかもちょっと大人のほろにが系。こればっかりは出来たてじゃないとね。ショコラフォンデュ。お店でもあんまし置いてない。あったとしてもできあいを温めて出してる所が殆どだからこんなトロトロのソースはお目にかかれない。作りたて。副社長の行きつけってフランス料理のお店なんだろうな多分。この深み、匂い、味、まろやかさ、超高級生チョコ使用に違いない。超ラッキ――――ッ。
「すみません、コーヒーも入れていただいて。私が入れないといけないのに」
「たまにはいいじゃないですか」
「これ、誰が?」
 そろっときくと、副社長さんが会長を見て数回小さく頭を振った。
 ――ええ、会長に入れてもらっちゃったの? やだ―――。
「す、すみません」
「コーヒーメーカーなら私も入れられるんですけどね。この部屋にはないんですよ」
 と、低姿勢な副社長さん。そんな、めっそうもない。
「あれは音がうるさい。味もすぐに落ちるし」
 ……会長。変な所にこだわるなって。それじゃエスプレッソマシンは何なんですか。
「ふふふ。ま、喜んでもらえてよかった。それじゃ私はこの辺で」
 私の幸せ顔を見て安心したのか副社長さんは部屋を出て行った。
 甘い香りが充満するお部屋にいつもの静けさが戻っていく。
「―――あ、すみません、会長、すぐに食べますんで」
 今更だが私は会長の机でものをほおばっていることを恥じてそう言った。
「いいよ、別に。ゆっくり食べなさい」
 と、お仕事モードに戻っていく会長。私のすぐそばでPCに向かい合う。
 驚くほど切り替えの出来る人だ、この人は。もう私なんて眼中にない。多分。私は食べながらそのオシゴト顔をちらちら眺めた。
 ―――仕事人間にも心を許せる部下がいたのかな。
 なんかそんなこと思った。あの姫島さんて多分そんなお人なんだろう。年齢がかなり逆転しちゃってるけど。
「あ、あの優しい方なんですね。副社長さんって」
 喋っちゃいけないと思いつつ……私は口を開いた。
「ああ。父の直接の部下だった人間でね。社内で一番人望が厚い。君はウチの社長の名前が言えるか?」
 無視されずに言葉が返ってきた。と思ったらまた説教か……。
「は、はあ。渋澤社長さん、ですか」
 確かそんな名前。HP見ておいてよかった。
「そう……。渋澤氏は日本では指折りの金融のプロだ。副社長もそうだが。あの2人のお陰でウチの財務部門は他社をかなりリードしていると言える」
「はあ」
 こういう話は仕事しながらでもできるんだな。それにしても菓子食べながらする話じゃないような。できたらソファかなんかに座って食べれるとサロン気分なんだけど。
 って私がくつろいでどうする。
「ご馳走になりました」
「ん。君は美味そうに食べるな」
「はあ」
 こんなもの気取って食べられるかっての。
 思いっきりタナボタ――…。しかし思いがけずご立派なスイーツを出されて私はその後会長に自作のデザートを出すのがかなり恥ずかしかった。
 ――無事食べてはもらえたのだが。
 ちょっとこの職、金額妥当なんだろうか。せめて明日からもっと原価をかけないと。マジでそう思った。


 いつものように「先に帰っていい」と言われて秘書室ヘ戻ると、秘書の人に声をかけられた。会長は今日も会食だ。
「ね、市川さん、あなた会長にお出しする軽食も作ってるんですって?」
 と、社長秘書さん。会長らの車の手配をして下に降りるところだったらしい。
「は、はあ」
「どうしてまた……。どう? 何かキツク言われたりはしない?」
「は、いや、特には……」
 毎度毎度、何て答えていいかわからない、この手の質問。副社長さんと結構和んでいたんだけどな。そういう所はこの人たちにはあまり伝わらないのだろうか。
「会長って日中のお出かけがあまりお好きでないでしょ? だからお昼を抜いてしまうこともしょっちゅうだったけど。そう……。とうとう閉じこもってしまわれたのね」
 と深いため息を漏らす秘書さん。ていうか元々は私が言い出したんだけども。
「大変ねえ」
 とまた眉間にしわ寄せ顔で言われる。だから全然大変じゃないんだけど。どうも本当のことが言いにくい、この雰囲気。
「ああ、でも明日はあなたも息抜きができるわよ」
「え?」
 息抜き?
「明日のお昼は会長、コンラッド東京であるHISのレセプションパーティに行かれるから。お食事はいらないはずよ。言ってらっしゃらなかった?」
「はい。知りませんでした」
「そう。やっぱり教えてもらってないのね、会長のスケジュール。……ま、いつものことだから。気にしないでね、市川さん」
「はあ……」
 ってもそんなに悲観的に捉えてないのだが。多分明日の朝言われるんじゃないかな。別にそれでも気にしない私。
「でも……。あなたも会長のスケジュール知っておいた方がいいかもしれないわね。この後室長に言って送っておくわね。よかったら参考にして」
「はい」
 スケジュール……。会食とかの?
「今日も会食なんですよね、会長さん」
「ええ、社長、副社長もご一緒にね。アメリカのグループ企業の方がいらっしゃるの」
「そうなんですか。どちらで?」
「久兵衛よ」
 えーー、銀座の? 超有名なお寿司屋さんだよね? すご。そういうところで毎日食べてるんだ……。お昼に寿司もどきなんて出すんじゃなかったと後悔する私。しっぱーい! 会食のスケジュール表必要だわ、こりゃ。
 何となく打撃を食らって、社長秘書さんについて下に降りる。そのまま帰らず、会長らを見送る秘書さんと話をしていた
 やがて会長ら3人が現れる。私たちも続く。
 広いエントランスに並んだ社用車はピッカピカのレクサス……。会長、社長、副社長が2台に別れて乗車するらしい。部屋からスーツ姿のままで出てきた会長に引き換え社長ら2人はコートの襟を立てていた。実際かなり寒くて、私でも寒い、と呟いてしまいそうだ。
 と、突然、社長の大きな声が聞こえる。
「会長。寒くないですか、コートもなしで」
「……いや。別に平気です」
「はははは、さすがにお若いですな。私も見習ってマフラーくらいは取ろうか」
 社長さんは笑いながら襟元に手をかける。高そうなマフラーがちらりと覗いて。
「――いやいや、社長。無理はなさらん方がいいですよ。私は逆に女房から『着込めるだけ着込め』と言われております」
 副社長が間を取る。
「ほう」
「やせ我慢をして薄着でいるのはかえってみっともないからやめてくれってね。それで倒れでもしたら目も当てられん、もうお互い年なんだから無理するな……と、それにはじまっていつの間にかウチの話になりましてな。どこそこのお宅のようにウチも全室なるべく同じ温度にしておいたほうがいいと言い出しまして。私が頷いて聞いているのをいいことに、結局家の空調を新調させられましたよ。……わははは、うまいことのせられました」
「はは、そうですか。どこも女性が強いですな。倒れるのはたいがい男の方ですし」
「ククク、そうそう」
「マフラーやっぱりしておこうか。血管切れちゃいかん」

 オヤジトーク炸裂――…。
 寒いんなら話してないでさっさと乗っちゃえば?
 初めて現物見たけど気さくな感じの社長さんだ。
 渋澤京一社長、姫島基樹副社長、そしてウチの会長。さしずめウチの社の三本柱って所だろうか。
 寒空に消えるオヤジ三人衆。会長以外はなんか人当たりよさそうなおじさんで。ちょっと意外だった。

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密室の恋 10

 帰りに残高照会したら確かに振り込まれていた。
 ――マジ!? これだけでも派遣の時より多いじゃん?
 まず目を疑う貧乏性の私。が、結局下ろさないで家に帰る。て、まだ最初にもらったお金が残ってるし。明日の昼いらないんだったらまた浮いちゃうし?
 つくづくおいしい商売だ……。でも材料費はケチれない。それなりにお金かけないと会長に具合悪くなってもらっちゃ困るから。
「ん〜。画像アップしようかな」
 寝る前にネットにつなぎ、ブログを見てみると、コメント1。開くと、新規の人からのだった。

『はじめまして。こんにちは。プシィといいます。お昼のメニューを探しててたどり着きました。画像とってもかわいいですね♪narsさんはどっかの社長さんなんでしょうか?専属ケータリングってなんかいいですね。実は私も時々カレシにお昼を差し入れしてるんですよ。kofiさんのメニュー参考にさせてもらいます♪』

 またまたおひるごはん仲間が。
 今回はあまり考え込まずこんな風に返してみる。

『はじめまして。コメントどうもありがとうございます。カレシさんに差し入れなんてとっても羨ましいです。よかったら色々教えてくださいね。私の方はお仕事中にお出しするのでどうしても手にとって食べて頂くものばかりに限定されてしまいます。参考になるかどうか。。。』

 この人もみなみんさん同様、カレシに出す料理ってことだから微妙に私とはニュアンス違うんだけどさ。
 『しあわせおひるごはん』ってタイトルまずかったかな?
 こんな寂しいブログをよく探し当てるなと感心しながらも、『カレシにお昼を差し入れ』という箇所で何となく和まされる私。
 そっかぁ。世の中にはほほえましいカップルって結構いるのねぇ。
 ってもまだ2組しか知らないけどさ……。




 次の日出社して秘書室に寄ると、『昨日の送っといたわよ』と社長秘書さんから言われ、会長に朝の挨拶した後初めて自分のメールボックスを開いた。
「うわー、すごいこの夜の埋まり方って」
 ずらずらと表にまとめてある会長のスケジュールを眺めること数分。見事なまでにアフターファイブは真っ黒だ。
「しかもこの店のリストってば」
 久兵衛はもとより、なだ万、サドレル、ロブション、トゥールダルジャン……などなど。グルメ特集? って首傾げるくらいの名店ぞろいだ。
 こんなお店で毎日のように食べてりゃそりゃ舌は肥えるわよねー。それでよく私の料理なんか食べてもらえるもんだ?……一番の疑問はそこなんだけども。
 まあ、お金がかかってるので私も頑張るしかない。
 にしてもすごいスケジュール。アフターファイブだけじゃなく、週末も結構埋まっている。

 ゴルフ、ゴルフ、ゴルフ……。

 この不況ですっかり下火になったかに思われた『接待ゴルフ』であるけれども。金持ち連中にはあんまり関係なかったらしい。相変わらずのご盛況ぶり? 寒いのにすごいな。
 会長、昼間閉じこもってばかりいて健康に悪いなーと思ってみたりするけど、このスケジュール見るとまんざらそうでもないのかもしれない。遠出は週末に集中してる。
 そして更に私は今週末に入っている日程に注目した。

「ん?」

 そこには『釣り』の文字が。

「釣り?――って会長釣りに行くの?」

 2日続けて『銚子』とある。つまり泊まりってことか。
 会長が釣り?
 ―――釣り。
 なんかイメージが。
 ……何となくしっくりこなくて、エスプレッソを持っていく際会長に聞いてみた。

「あ、あのう、昨日秘書の方から会長のスケジュール表頂いたんですが、今週土日の『釣り』って何ですか?」

ってまたストレートに。 『何ですか』って聞き方変だとわかってはいたけども。思ったとおり妙な顔して言われる。

「何って、そのままだが。釣りに行くんだよ。銚子にな」
「はあ。会長、釣りがご趣味だったんですか」
「いや、まさか。接待だ」
「―――接待!?」
 と、私はすっとんきょうな声をあげた。

 ――接待って!?
 『接待釣り』なんてあるの??
 マジ!?

 驚きを隠せない私。会長はやや不満げに顔をしかめつつ大真面目に続ける。
「そうだよ。副社長がひとりじゃアレだというからいつも付き合ってるんだ」
 えーー……。副社長って。昨日のあの人と!?
 釣り?
「つ、釣りって。釣れるんですか、そんなに」
「? そりゃまあ。一本釣りだとメバルか鯛かな。今週は沖合いだから……、先方はびん長を狙ってるようだがね。と言っても小さいやつだよ」
 ―――マジ!?
 びん長ってことは。マグロ釣っちゃうの?
 えーーー?
 私は生まれは田舎だが、目の前で大真面目に釣りの話をしている会長が不思議な人に見えてならなかった。
 そもそも『接待釣り』って何??? そんなの接待になるの??
「……何だ? 君は釣りに興味でもあるのか?」
 しかし逆に不思議そうに問われる。
「あ、い、えーと」
 ていうか、『接待ゴルフ』はたまに聞くけど『接待釣り』なんて初耳なんですけど!?
「マ、マグロって。えーーー? こんな所で釣れるんですか?」
 変な質問をしてしまう私。
「だから小物だよ。……好きなら持って帰ってやろうか? いつもは先方にあげてしまうんだが。副社長も船上で食べるだけ食べたらもういいって口でね。家に持って帰ると持て余すらしいし、秘書にやっても処理に困るし」
 えーー? そんなさも釣り人っぽく語らないで下さいよ。
 マジでこの人たちってマグロ釣っちゃうの!?
 チョーおかしいっ! 釣りバカ日誌かあんたらは!?
『クッ』
 笑いがこみ上げてきそうになる。
「そ、そりゃ拝めるものなら拝みたいですけど。でもどうしてそれが接待なんですか? それもわざわざ会長がいらっしゃるなんて」
「向うも社長クラスが来るんだ。それなりに付き合わなきゃならんだろう」
 ――プ。マジ!?
「さ、寒くないですか? もうすぐ12月ですよ?」
「フ。ゴルフだと伊豆で温泉つきだがね。少々早起きして船を出すその程度のことで100億の商談がまとまるんだから安いものさ」
 って、そんな問題!? おかしすぎる、おじさんの世界って!
 私は遂にこらえきれなくなって秘書室へと退散し、お腹を抱えた。いくら広い部屋だといっても大声で吹いちゃうと聞こえるから必死に口を押さえて。
 もーー……。マジでおかしい、あの人。
 『接待釣り』ってありなの!?
 ――あ、ひょっとして昨日副社長がいらしたのって釣りの打ち合わせだったりとか!? 
 ナニソレ!! あんな大真面目な顔しておかしすぎ!
 何で会長ってばそんなに私の笑いのつぼ押さえてるの〜〜……?


 結局名前呼ばれるまでヒーヒーうけまくっていた私。ドア開いて会長に顔合わせるのが大変だった。
「市川くん。3時間ほど出てくるから」
 会長は普段と寸分たがわぬ能面顔で。既にお昼前になってて。
「あ、はい。お昼は不要でよろしいですか。会長」
「……いや。戻ってから食べるよ。何か用意しておいてくれ」
 意外な返事が返ってきた。
「あ、あの。立食パーティじゃないんですか?」
 またしても思いつきで言ってしまう私。昼時のパーティってそれっぽいし?
「立食は好かん」
 キッと会長の目が光る。
 ――は?
「あ、そ、そうですか。すみません、私。知らなくって」
 知らないよ、そんなの。立食嫌いな人っているの? っていうか会長、アメリカ暮らししてたって言ってませんでしたっけ? それで立食パーティ嫌いって? はあ? って感じだ。
「いや。昼時にその手の集まりに行くことはめったにないんだがね。知り合いなんだよ。仕方ない」
「は、はあ。えーと、それじゃ何か軽いものでもご用意しておきます」
「ん」
 というわけで。
 昨日の社長秘書さんの予想は外れてしまい、会長が行ってしまった後私は近所へ買出しに走った。
 庶民なら喜んで行くだろう昼間のパーティ。
 コンラッド東京のパーティ料理食べない人っているんだ?
 もー、わ・が・ま・ま! 相当なわがままだよ、会長って。
『何か用意しておいてくれ』って。
 とてもじゃないが私にはあーいう所に出てくる料理レベルの一品なんて作れない。
 でも。
 何故かプレッシャー感じなくって……。
 普通に食品売り場ハシゴして、さっさと部屋に戻る。
 メニューはもう思いっきり立食にありがちな『小籠包』にした。
 毎回思いつきなので大した根拠もなく。ホテルのメニューみたいに立派にできないけど、それでも一応皮から手作りして、蟹のほぐし身と豚ミンチとスープの煮こごりを詰めて。3時間あれば楽勝の、またまた簡単メニューだ。
 時間が余ってしまったので暇つぶしに(コラ)ネットつないでブログを覗く。みなみんさんの書き込みを読み返していてぼんやり思った。

 ――セレブなくせにわざわざ出先から帰ってきてひるごはん食べようとするんだ?

 会長にしてもみなみんさんの彼氏にしても何でそうなの? この人たちってマジちっちゃい子みたいじゃない?
 ――男ってばねえ。よくわかんない生き物だって時々思う。でも今までの付き合いでそういう人はいなかったけどな……。
 ある年齢過ぎるとそうなるのだろうか。おじさんの妙な共通点かもしれない。
 会長はきっちり3時間とちょっとして帰ってきた。大きな紙袋のお土産つきで。
「アメリカにいた頃の友人が業績不振だった半導体のメーカーを買収してね。新しく家電の会社を立ち上げたんだよ。これは記念品らしいからよければ君が使いなさい」
 と言って手渡されたモノ。
「は、はい。……え、これ」
 中にはダンボールの箱が。取り出すと、中身は可愛らしい炊飯器だった。
 ……いや、炊飯器もどきというか。白くてコロンとしてて、私が持ってる炊飯器とはちょっとデザインが異なる感じのもの。
 さっと箱の説明書きみると色んな使い方ができるようなことが書いてある。
「これって」
 かわいーー……。
 特に料理好きじゃなくてもそう言ってしまいそうなキュートな外見だ。
  『料理好きさんもそうでない人も楽チンクッキング♪』って。ふーん。
「いらなければ秘書室に下ろして。君の好きにしなさい」
「は、はあ。じゃ使わせていただきます」
 例によってエラソーな命令口調にシタテに出る私。
 ――プ。
 お土産持って帰ってくれて。可愛いところもあるじゃん?
 会長はホントに食べて来なかったみたいなので(信じられないよね? コンラッドよ?)、私は用意していた小籠包とウーロン茶をお出しした。
 具が熱すぎて舌が火傷しちゃわないようちょっと冷まし気味にして。おじさんへの見えない心配りだ。
 会長はいつも通りPC見ながらつまんで。私の更新記録はまた伸びた。

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